6人が本棚に入れています
本棚に追加
『よし、じゃあ、賭けをしようじゃないか』
『か、賭け…?』
何を期待してたってわけじゃないけれど、拍子抜けして言葉がでない。
『俺があと10分でほどけたら、明日のランチは芹澤のおごり!!どう?』
『…じゃあ、もし負けたら何してくれるんですか?』
ごくりと唾を飲み込む。
『ん…それはまぁ、追々芹澤が考えといてよ』
…結局、先生が5分と経たずに髪をほどいてしまったので、その間必死で考えていた、“私側の条件”は、効力を発揮せずに終わってしまったのだが。
ただ、帰り際先生に、『もし俺が負けたら何させるつもりだったの?』と聞かれ、顔を真っ赤にして口ごもってしまったのだと聞けば、何を考えていたのか、大体のことは予想がつくと思う。
もうすっかり日が暮れて、暗闇が支配し始めた校舎を、先生と二人、鞄を取りに教室まで戻った。
一応は、一人でも大丈夫と断ったのだけれど、ふざけた先生に学校の怪談話を聞かされて、極度の怖がりだった私は、そうもいかなくなってしまったからである。
人気のない薄暗い廊下を、二人並んで歩く。
外にいた時は、会話もスムーズに弾んだのに、こうして静かな場所にいると、今さらながら意識してしまって、緊張で言葉が出てこない。
最初のコメントを投稿しよう!