星月夜に君を想うこと

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閉じていた目を開けると、驚いたような先生の顔があった。 その頃になってやっと、自分がしたことの事の重大さに気付き、あわてて体を離した。 『ごっごめんなさ…っっ』 羞恥心から思わず逃げ出そうとした私の腕を、先生はきつく掴んだ。 『いいよ』 『え?』 『キスして、いいよ…』 さっきよりもっと、強い力で抱き寄せられれば、あの甘い香りがむせ返るように押し寄せてきて、あらゆる神経を麻痺させる。 先生の腕の中で、私の体はすっかり自由を奪われていた。 (…あぁ私、私は、ずっと昔からこの匂いを、知っている気がするの…) 晩秋の夜の、冷えきった空気の中、私の体だけは、すべてを焼き焦がす真夏の太陽のようにほてっていた。 猫の爪ほどの細い三日月が、窓越しに見えたのを最後に、記憶は途切れる。 そのまま私たちは、床に倒れ込んだ。 あの甘い香りが、電気信号のように体中を駆け巡れば、もう何も考えることなど出来なくなっていた。 ―そう、まるで、死へと誘う甘美なる毒―
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