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『こぉら美夢ちゃん、早くねんねしなさい。でないとねむねむおじさんが迎えに来てくれないんだから』
―まだ私が幼かった頃、ママが夜ごと話して聞かせてくれたベッドサイドストーリー。
しつこく続きを催促するから、終わることを知らなかった物語。
……もう、ファンタジーの世界の住人たちが、目を凝らしさえすればそこかしこにいるなんて、信じられるほど子供でもないけれど、彼らはきっと今でも、私の心のどこかで、息づいているはずなの…―。
ひっそりと静まり返った、真夜中の閑静な住宅街で、一軒の家のバルコニーだけに、煌々と明かりが灯っていた。
時計の針は午前二時を指している。ちょうど、草木も眠る丑三つ時と呼ばれている時間帯に、いきもののバイオリズムを無視して、眠らない一人の少女がいた。
いや、眠らないのではない。眠れないのだ、彼女は。
“愛くるしい”という形容詞が、ぴたりと当てはまる甘い顔立ちは、とてもじゃないが今年、19になるとは思えないほど幼く見えた。
泣きはらして赤くなった目をこする様などは、まるでローティーンの少女だ。
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