プロローグ

2/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
『こぉら美夢ちゃん、早くねんねしなさい。でないとねむねむおじさんが迎えに来てくれないんだから』 ―まだ私が幼かった頃、ママが夜ごと話して聞かせてくれたベッドサイドストーリー。 しつこく続きを催促するから、終わることを知らなかった物語。 ……もう、ファンタジーの世界の住人たちが、目を凝らしさえすればそこかしこにいるなんて、信じられるほど子供でもないけれど、彼らはきっと今でも、私の心のどこかで、息づいているはずなの…―。 ひっそりと静まり返った、真夜中の閑静な住宅街で、一軒の家のバルコニーだけに、煌々と明かりが灯っていた。 時計の針は午前二時を指している。ちょうど、草木も眠る丑三つ時と呼ばれている時間帯に、いきもののバイオリズムを無視して、眠らない一人の少女がいた。 いや、眠らないのではない。眠れないのだ、彼女は。 “愛くるしい”という形容詞が、ぴたりと当てはまる甘い顔立ちは、とてもじゃないが今年、19になるとは思えないほど幼く見えた。 泣きはらして赤くなった目をこする様などは、まるでローティーンの少女だ。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!