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勢いよく振り向いた私の目に飛び込んできたのは、やっぱりと言うか何と言うか、黒々とした人型のシルエットだった。
(……~っっ?!)
思わず叫び出したくなるのを、必死で口を押さえて声を殺した。
(しっかりするのよ美夢!自分をしっかり持って!!まずはこの人が、ただの変質者なのか、はたまた“ねむねむおじさん”なのか、そこのところをはっきりさせないことには始まらないわっっ)
そう言い聞かせながらも、生まれてはじめて遭遇した怪奇現象というものに、当然ながら頭も体もついていけてなかった。
何より不気味なのは、その人の輪郭があいまいで、夜の闇と体の境界線がはっきりしていないところだ。
暗闇のせいなのか、あるいはもっと、ファンタジー的な要素が関わっているのか。
何はともあれ、常人で無いことは確かだった。
それでもよく目を凝らして見れば、さっきから、風にばさばさと音を立ててはためいているのがマントであることと、頭の上の特徴的なフォルムがシルクハットであることは、辛うじて分かった。
体格からして、性別は男だろうか?
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