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夜になり、世界に静けさが訪れる度に、激しく彼女を襲う孤独は、眠ることを許してはくれなかった。
(空っぽのベッド)
(薄れていく匂い)
(霞む記憶)
夜の間中、百回寝返りを打ち、千回ため息をついて、一万粒の涙をながしても、とうとう一時の休息をとることさえ叶わずに、無情にも空は白み始める。
あれからずっと、そんな日々を繰り返してきた。
夢でくらい、愛しい人に会えたなら、彼女の傷付き、衰弱した心もまた、どんなにか救われたことだろう。
しかし、胸を裂くような寂漠と慟哭は、激しく痛みを伴い、追々寝かせてなどくれなかった。
…そうして彼女は今夜も、夜が明け、東の空に陽が昇るのを待っているのだ。
『会いたい…っっ今すぐ会いたいよ、先生……っっ』
長い夜を一人きり。ただひたすらに、それだけを星に願って。
傍らには彼の残した天体望遠鏡。
レンズから垣間見る、星々の密やかな囁きだけが、彼女の哀しみを分かっていてくれた。
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