星月夜に君を想うこと

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それは星の綺麗な、寒い寒い冬の夜のこと。 私はここ最近、毎晩の日課になっている天体観測をしようと、吹き付ける北風に、今にも持っていかれそうなショールを必死で体に巻き付け、かじかむ指で一人望遠鏡を組み立てていた。 時刻はすでに午前3時を回っていたが、目は爛々と冴え、少しも眠くはなかった。 それはいつものこと。夜になかなか寝付けないのは今に始まったことではなかった。 もともと寝付きの悪かった私だけど、一年前に先生が亡くなってからというもの、少しずつ一日の睡眠時間が減っていき、今では日中、仮眠で2時間眠れればいいくらいにまでなってしまった。 医者は皆、口を揃えて“神経衰弱からくる不眠症”と言った。 睡眠薬を処方されたこともあったが、一度、薬の大量摂取による自殺未遂をしてからは、それもなくなった。 たまに、このまままったく眠れなくなって、いつか死ぬんじゃないかと思うことがある。 心配してくれている友人たちには悪いけど、私にはその方が幾分楽だ。 『…だって、先生のいない世界に生きていたって、私には何にも、意味がないんだもの……』 あまねく星々に腕を伸ばしてみても、拳が掴むのは、二月の凍えるような空気ばかり。 もしあの煌めきの中に先生の魂があるなら、そんなところで下界を見下ろしていないで、いますぐ私を迎えに来てほしいのにと思う。
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