星月夜に君を想うこと

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組み立て終わった望遠鏡を、オリオンの三つ星の方角に向けて覗く。 肉眼ではぼんやりとした、煙のようにしか見えないプレアデス星団も、こうしてレンズを通して見れば、青く輝く星々の集まりだということが分かる。 『もし本当に“蒼水晶”があるなら、きっとこんな感じに違いないわ』 童話作家だったママが、寝る前によく、お話してくれた即興の物語の中に、子供たちを夢の国に連れて行ってくれる、魔法使いのおじさんの話があった。 おじさんは子供たちに、“ねむねむおじさん”と呼ばれ慕われていて、夜になると銀のフルートを奏でて子供たちを誘い出し、琥珀の星型宇宙船・シューティングスター号に乗せて、夢の国まで案内してくれるのだ。 今聞くと、まるでただの誘拐魔じゃないかと笑ってしまうが、あの頃の私は、ほかのどんな話よりも、この“ねむねむおじさん”が一番のお気に入りだった。 蒼水晶というのは、この物語に出てくる、夢の国原産の、サファイアにも似た青い宝石で、星型にカットし、彗星の尾を束ねて作ったひもに通したペンダントは、夢の国への通行許可証になるのだ。 『欲しいなぁ、私も。蒼水晶のペンダント。帰らないでずっと、先生の夢だけ見ていられたらいいのに……』
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