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雑居ビルの一階にある店に入ると、意外に店内は広かった。
店の真ん中あたりの天井に、小さなミラーボールが回り青い光を放射している。
ボックス席が6つあった。
2組の客がいた。
健吾は女に言われるままに、カウンター席に座った。
80年代の歌謡曲がランダムに流れている。
「あたし、ゆりか。あなたは?」
「健吾」
「いい名前ね。何にする?」
「いつも焼酎だけど」
「じゃあ、セットの方が安いよ」
焼酎をレモン水で割ってステアする。
細い指がしなる。
古い表現で言えば、石鹸の匂いのするような女だ。
「昔の歌謡曲、好きなの?」
「有線?これは店長の趣味。」
肌が白い。
ほとんど化粧はしていないようだが、肌がきれいなので健吾にはそれで十分だと思える。
黒目がちな切れ長の目に、清涼感を感じる。
淡いピンクの唇が、口紅なのか素の色なのか分からない。
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