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「嫌……っ!嫌です、こんなの!」
悲痛な叫びだった。
咽び、喘ぎ、嗚咽する。
「良いから。俺に任せろ」
泣きじゃくる少女を正面から抱き締め、少年が言う。
――だが。
「嫌っ、イヤイヤイヤイヤ、嫌!」
少年の腕の中で、少女は長い髪を振り乱す。
頬には涙が伝い、瞳は悲しみと絶望に彩られる。
嫌、という一言をただ繰り返し、繰り返し、繰り返す少女。ソレは嘘偽りなく、掛け値なしに彼女が拒否をしている証に他ならない。
だが、それでも……少年は、言った。
「大丈夫だ。だから、落ち着けよ……な?」
優しい声音。気遣いの瞳。安堵の腕と安寧の体温。
それらの、安心できる全てに包まれ……しかし尚も、少女は叫ぶ、咽ぶ、嗚咽する。
「嫌、嫌ぁっ!そんな、こんなっ……ゴフッ、カフッ!」
厭な音。ただの咳ではない。紛う事なき喀血音。
少年の服を、血で染めて――それでも少女は、半狂乱に泣き叫ぶ。
「嫌ですっ、わたしこんな、嫌っ!」
カフ、ともう一度、咽を鳴らして。少女はその言葉を……口にする。
「わたし、わたしはっ……貴方を犠牲にしてまで、生きたくないっ!」
それは、懇願。悲痛で痛切な懇い願い。
だが。それを受けてなお、少年は揺るがない、揺るがない。
「良いから。もう、良いから」
優しい声。だが、少女は気付いていた。彼の瞳から、徐々に光が失われていくのを。
そして、少年も自覚していた。目の前の景色が徐々に掠れ、薄れ、消えていくのを。
「嫌っ、嫌ぁ……っ!」
少女は叫ぶ。少年は宥める。どこまでも噛み合わない。どこまでも平行線。
――だが、少年は誓ったのだ。
例え、何を失おうとも助けてみせる。救ってみせる。愛しい少女の命を、護ってみせると。そう誓ったから、だからでこそ、彼は躊躇わない。
いかなる代価も代償も、少女の為ならば払って見せよう。
……そう。それが、例え……彼の命であったとしても、だ――
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