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「でけー!」
大きな門の前、一人の男が周りの目など気にしないで大声を出して驚いていた。
茶髪のセミロングで蒼い目をした中肉中背、背中に大きな剣を背負っている男。
当然ながらそのような大声を出せば周りの目は一斉にその男へと集まる。
集まった視線は叫んだ男の隣にいる背の小さい男を恥ずかしくさせ顔を下に向けさせている。
こちらの男は隣の大剣男より十センチくらい背が低く、黒髪が鼻の位置まで伸びている男。
男はそんな小さな男の気持ちなど知らず、さらにテンションを上げて隣にいる服の袖を何回も引っ張っていた。
「おい見ろよルシファー! 王都の門ってこんなにデカいぞ! 俺らが住んでいた町とは大違いだ!」
「あ、アル君、そんな大声で叫ばなくてもわかっているよ。だからそんな大声で叫ばないで。ほ、ほら、周りの人達だって見ているよ」
ルシファーと呼ばれた男はさっきよりも恥ずかしそうな表情でアルという男の服の袖を弱々しく引っ張る。
このアルと呼び方はルシファーが親しみを込めた呼び方でホントの名前はアルベルスだ。
そして、アルベルスもやっと自分が周りに見られていることに気づき、ルシファーほどではないが顔をほのかに赤くして恥ずかしがった。
「あぁ悪い悪い。けど、流石の俺もこんな立派な門を見たら騒がずにはいられないぜ」
「アル君は凄いものを見たら大抵は驚くんだと思うんだけど……」
「うるせールシファー! 俺は何でもかんでも驚くっていうわけじゃねーんだぞ! あぁもう、そんなことはどうでもいいとして早いところ試験会場に向かうぞ!」
一人勝手にルシファーに怒鳴り散らしてからアルベルスは黙って門の中へと入っていく。
ルシファーは慌てながら「待ってアル君!」と叫び、一人ずかずかと前へと歩いていくアルベルスの後を追いかけていく。
新たに騎士になろうとする小鳥達、彼らは無事にこの大空へと羽ばたいていけるであろうか?
それは誰にもわからないこと……。
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