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「――同じってわけだ」
それは。
何の色も映さない瞳。薄い唇。丸い曲線を描く輪郭。きめ細やかで透明な白い肌。
あまりにも、教室とは違う姿に、
「…………」
俺は、見とれていた。
……教室みたいに笑ってないし、明るいわけじゃない。
けど……何故か……
俺の目には、こっちの方が魅力的に映ったのだ。
「さっきのお詫びに、話してあげる」
「――な、何をだよ?」
そう思った事に恥ずかしさを感じて、目をそらして染みだらけのフェンスを見る。
「さっき設楽君が言ったとおり、私のイメージ違うでしょ」
「ああ」
なんとなくだが。
「実は今のが素で、教室は皮をかぶってるんだ」
「……なんでわざわざ――」
「設楽君は、どっちが好み?」
「こ、好みって」
俺は微かに焦る。しかし、前にあるのはなおも無表情。
けど、一瞬。……一瞬、悲しみの表情が見え隠れしているような感じがした。
なんだか温かな空気を醸し出す校庭とは裏腹に、屋上の空気は重く冷たい。
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