始まりはいつも突然に

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「あ? いや、その、え?」 ……本来取るべき『大声を出す』という選択が、パニックのせいで出てこないまま、 「え……せりいっ!」 奇妙な擬音を静かな住宅街に残し、俺は黒い車に押し込まれ、その場を去る。 ……車が出発して三分ぐらい、ようやくパニック状態から抜け出した俺は、冷静に状況を確かめる。 まず、この車は五人乗り。運転席と助手席という極めて一般的な車だ。ちなみに乗ってるのは三人。俺と運転手と変な女。 しかし、助手席には誰もいない。俺を見張るためか、女性は俺と共に後ろの席に座っていた。 とりあえず、俺のどこぞの少年探偵団のひょろすけ(光彦)レベルの頭脳がたたき出した結論。 ――これは誘拐だな、うん。 …………え? マジ? つーかなんでだ? 金か? でも別に父はそんなに金稼いでる訳でもないし、母にいたっては主婦だ。つーか主婦でさえ務まらないんだが、あの人は。 最近パートを始めたらしいが、何週間持つのやら。 ある奴と2000円賭けているため、出来れば春休みが終わるまでに辞めてほしい所存である。
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