ギャップ

36/84

5341人が本棚に入れています
本棚に追加
/339ページ
「私ね。幼い頃からモデルやってるの」 「モデル? モデルってなんか腰をクネクネした変な歩き方をするやつか?」 「それもたまにやるけど、ほとんどは写真撮影」 そんなもんなのか。そっちの世界には精通してないから、よくは知らない。 「だから、教室ではああいう性格なの。結構好かれるから……」 「好かれる性格かよ」 鳥谷の横を通り過ぎて、フェンスによりかかながら言う。 「嫌われる可能性は低いでしょ? 今時ぶりっ子は時代遅れだし」 ……まあ確かに、嫌う奴は少ないだろうが。 鳥谷は笑みを浮かべるが、それは所詮空虚の笑み。すぐに散る。 「だから……こんな二重人格みたいになっちゃった」 すぐに散って、またもや無表情。 ここで、何かを……何かを、言うべきなのだと思う。 だが、何も口には出てこない。脳にも何も思い浮かばない。 俺がここで気の利いたセリフを出すためには、いろいろなステータスが足りなかった。
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5341人が本棚に入れています
本棚に追加