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「……あの、圭さん。せめてマドンナ二世にツッコんでくれませんか?」
世の中の90%は抱きしめたくなるように、瞳をうるうるさせてツッコミを頼んでくる相島……を、スルー。
許せ相島。笑いの世界は非情なんだ。この抱きしめられない俺の気持ちも察してくれ。
「ウォークマンで何聞いてたの?」
似合いすぎのスーツを身に纏った社長が聞いてくる。一体この人は何歳なんだろう。
「自分の歌ですよ。歌詞間違えたら大変ですから」
その言葉を聞いた二人は、何故か急に同じようにニヤニヤしだして、
「圭さんなら、多少間違えても大丈夫ですよ」
「そうね。宇佐美君ならそれをカバーできるものがあるわよ」
そんな脈絡もない言葉を、二人は口にする。
なに? もしかしてこの二人は、俺が歌詞を間違えたら、笑いにできるとでも思ってるのか?
できれば、そんな訳のわからん方向にいきたくはないものだが。
「そういえば、なんで相島は来たんだ?」
その問いには、目をパチクリさせてる相島ではなく、隣にいる社長が答える。
「相島さんは五月にデビューするから、そのために少しでも場に慣れるためにって事よ」
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