ギャップ

43/84

5341人が本棚に入れています
本棚に追加
/339ページ
「……あの、圭さん。せめてマドンナ二世にツッコんでくれませんか?」 世の中の90%は抱きしめたくなるように、瞳をうるうるさせてツッコミを頼んでくる相島……を、スルー。 許せ相島。笑いの世界は非情なんだ。この抱きしめられない俺の気持ちも察してくれ。 「ウォークマンで何聞いてたの?」 似合いすぎのスーツを身に纏った社長が聞いてくる。一体この人は何歳なんだろう。 「自分の歌ですよ。歌詞間違えたら大変ですから」 その言葉を聞いた二人は、何故か急に同じようにニヤニヤしだして、 「圭さんなら、多少間違えても大丈夫ですよ」 「そうね。宇佐美君ならそれをカバーできるものがあるわよ」 そんな脈絡もない言葉を、二人は口にする。 なに? もしかしてこの二人は、俺が歌詞を間違えたら、笑いにできるとでも思ってるのか? できれば、そんな訳のわからん方向にいきたくはないものだが。 「そういえば、なんで相島は来たんだ?」 その問いには、目をパチクリさせてる相島ではなく、隣にいる社長が答える。 「相島さんは五月にデビューするから、そのために少しでも場に慣れるためにって事よ」
/339ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5341人が本棚に入れています
本棚に追加