ギャップ

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……なんもわからんくなるぐらいに、スカッてなるぐらいに、おもいっきり歌ってやる。 初めの歌うポイントが近づく。俺はそのポイントに合わせて息を吸い、 「――――」 叫んだ。 ‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡ 「……これよ」 凄い声援と歌声が耳を支配する中、隣の二人に聞こえない小さな声で、私はため息混じりに呟く。 そう、これだ。 私がさっきあいつを見てた理由も、今隣の二人が目を見開いて驚いてる理由も、声援が他のアーティストより大きい理由も、 全部、これだ。 ――あいつの、歌声だ。 ただ単に上手いとか、そういったモノとはちょっと違うところにある。 低く、渋い声でも。高く、透き通る声でも。 そういうのとは、ちょっと違う。
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