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高くも低くもなく、絶妙な声。
耳を通り越して、脳さえも通り越して、深い深いところにドシーンと届く。
――私は、歌手を目指してこの業界に入った。
そして、もうちょっとして、それはアイドルとしての形で叶う。
ボイストレーニングを何回も何回も繰り返しやって、ようやくここまでたどり着いた。
なのに、
あいつはボイトレをしてないどころか、普通の一般高校生で、
それで、こんな声を出せてしまうのだ。
……多分、これが才能というものなんだろう。
前を見ると、全員のお客さんが立って、みんな手を振り回していて、
「…………」
悔しさとか羨ましさとか、そういった複数の感情を抱えながら、私はその光景を見続ける。
その声を出してる張本人を、見続ける。
‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡‡
……疲れた。
疲れて、疲れて、疲れて、疲れて、疲れた。
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