始まりはいつも突然に

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しばらくしたら、そこは都会。高層ビルがいっぱい立つ、まさに都会。 まさかこんな目立つところでは殺さないだろうと思い、そして沈黙が痛々しくなってきたのもあり、俺は勇気を持って話し掛けてみる。 「あの、これってあと何分ぐらいかかるんっすかね?」 「あと、10分ぐらい」 「こういう時って、早く着いた方が読者は進みやすいっていうか――」 「読者?」 「いや、なにもないです」 そうか、こういう話題は俺以外わからないんだな。一つ勉強になった。 15分後、車がとある駐車場に入り、バックして止まる。 「さ、着いたわよ」 「つーか手錠どうするんですか? 俺犯罪者みたいで嫌なんですけど」 「それおもちゃよ。本気でやったら引きちぎれるわ」 「…………」 ということは、俺はずっと逃げるチャンスを見逃してたって事か。
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