始まりはいつも突然に

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「こぼれ落ちてたまるか!」 こういう事をする奴に一人しか心当たりがなく、そいつに文句を言いながら素早く顔をあげる。 案の定、そいつはお馴染みの顔だったのだが、俺の顔を見たそいつは目をパチクリさせて、 「……見間違いでした」 「違う、本人だ! つーか知らなかったとしても謝るぐらいしろ! ……杏奈!」 俺のツッコミをことごとく無視しながら早歩きして逃げようとしていたそいつは、最後の杏奈という声にだけ反応して止まり、また早歩きで俺の前に戻って来る。 つーか早歩き早いな。機会があったら競歩を進めてみよう。 「あんた……圭一?」 俺は同意の代わりに右手をバッチグーの状態にした。すると杏奈は俺の顔をマジマジと見て、 「まあそんなにダサいポーズをするのはあんたぐらいやな」 「ダサい言うな」 そして一回大きく息を吐いて、 「……なんでそんな、まぎわらしいかっこしてんねん!」 全くわけがわからない理由で出されたチョップを真剣白刃取りで防ぐ。 「とりあえず早く行くぞ。電車間に合わん」
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