始まりはいつも突然に

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ちなみに賭けというのは家の母の事だ。まさか二週間もパートが続くなんて思いもしなかった。 そのスーパーに今頃苦情が殺到してクレーマーの対応に追われてる、みたいな事はないと信じたい。 「ほんまに~?」 「うん、マジマジ」 俺は何とか後5分で着くはずの椎蘭高校までごまかし続けようとする。 が、俺は決定的なミスをしてしまった。財布が入ってるであろう、エナメルの鞄をチラ見してしまったのだ。 案の定、意外と鋭い杏奈はスナイパーの目付きで鞄のチャックに狙いを絞ると、 「そこか~!」 どこぞの漫画を真似たかしらない声をあげ、そのまま一直線に手を伸ばして来る。 が、甘い。数々の杏奈との死闘を繰り広げてきた俺は、右に背負っていた鞄を背中に回してかわす。 保育園の時にお気に入りのチョロQをぶっ壊された。 小学生ん時遠足の弁当のおかずを全部横取りされた。 中学生ん時、新しいゲームを買った瞬間奪われた……。 ……あの時の苦労は、今生かされたんだな。うん、感動の瞬間だ。
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