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「むぅ~。圭一ごときが~」
そんな負け惜しみの言葉が、心地よく感じる。
まあ、そういう貸し借りはトラブルの原因だ。さっきの言葉に満足したため、大変不本意ながら俺は鞄を掴ましてやろう。
うん、大人だ、俺。
が、そんな大人の心遣いがわからない女が一人。
幼なじみは突然、サヨナラのホームを踏もうとする外国人野球選手みたいにタックルをしてきた。
「うわ、おま――」
もっとも俺は今、ホームベースを守っているキャッチャーではないため、軽々と押し倒されてしまう。
「さぁ、財布渡しぃ!」
そう言った杏奈は俺に押し潰されてるであろう鞄を求めて、俺の背中の下に手を伸ばす。
--待て。
これって他の人から見ると、俺が杏奈に押し倒されて抱き着かれてる光景にならないか?
案の定、俺達をチラ見しながら、顔を赤らめて通り過ぎていく生徒達。
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