始まりはいつも突然に

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「実はな……吉川。ここだけの話なんだが――」 俺は吉川に顔を近づけ、声を小さくして話す。 「な、何だよ」 妙に真剣そうな顔をする俺を見てか、若干戸惑いの顔を見せる吉川。 「実はTRINITYってな……」 ここで一回話を切り、 キーンコーンカーンコーン ごまかしの成功を告げる音色が、高々に響き渡った。 途端にガタガタっと、周りから聞こえる椅子の効果音。 「……ふぅ。やっぱりこの話はやめといた方がいいな」 そう言って、俺もみんなと同じく席を立つ。 「ま、待てって! その話ちゃんと聞かせろよ」 「……いや、あれは戯言だ。忘れてくれ」 吉川のなんともいえない不安そうな顔を背に、俺は教室から廊下に出た。
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