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気付いたのは、放課後の教室でだった。
といってもさっき俺が想像してた夕日に照らされた赤い教室ではなく、今日の授業は午前中だけなので、教室は普通に春の明るい光で満ち足りているた。
「どうしたん?」
話かけてくるのはたった一人の幼なじみ。
まだ部活は始まってないため、しばらくはこいつと帰ることになるだろう。
「だから、どうしたんって」
杏奈は俺に言葉が届いていないと勘違いしたらしく、スポーツバッグを持ち直して言い直す。
対する俺はエナメルのバッグに手を入れたまま、引き攣った顔で聞いた。
「お前、なんか盗んでない?」
「はぁ? 盗んでへんよ」
杏奈は本気で疑問視しているらしく、それ以外の表情は隠されていないように見える。
俺はもう一回『それ』を入れてるはずの鞄のポケットを見て、やっぱりないことに落胆する。
「……やばい」
「え?」
「…………財布が……、ない」
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