始まりはいつも突然に

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「はぁ? 財布がない?」 「ああ、財布がない」 何故か杏奈の顔は、俺を訝るような顔だった。言葉にすると、『あんたらしくないな~』って感じだ。 「……圭一ってさ、結構忘れ物多いやんか。中学で一回鞄忘れたし」 ……ああ、実話だよ、悪いか。 「けど、そんときでも何でもない顔で学校に戻ってったやん。財布もうちが知る限り三回無くしてるけど、全然落ち込んでる感じじゃなかったし」 なんだその説明口調は。 「何でそんな落ち込んでんの? 金もそんな入ってなかったのに」 「いや、ちょっとな……」 確かに、普通に無くしただけなら、失恋した男の如く落ち込む事はないだろう。 しかし、この無くした状況がヤバすぎるんだ。 この学校で無くしたってことと、今財布には『あるカード』が入っているっていう事実が。
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