高橋春紀

1/14
前へ
/126ページ
次へ

高橋春紀

  『一度、皆さんで顔合わせをしませんか?』 そんなことを言い出したのは『MAY』だ。 私は、《自殺サークル》の掲示板を表示している、ケータイのディスプレイを見つめた。 ログインした状態なので、真っ黒な画面の端には真っ赤な文字で『春紀』という私のハンドルネーム(ちなみに本名)が表示されている。 ケータイ片手に、私はポツリと呟いた。 「顔合わせ、かあ…」 自殺の段取りはもう、サークルの皆で決めてある。 内容は練炭自殺。 決行は一週間後だ。 ただ、その前に一度、皆で会おうというのが、MAYの主張だった。 リロード。 ケータイの画面が、一瞬、真っ白になる。 再び画面が黒く塗り潰された時、MAYの書き込みに、レスがついた。 ヒロ:どうして? わざわざ仲良くなっても、どうせ、すぐに死ぬんだよ? まったくもってその通りだ。 私は、サークル最年長である、大学生の『ヒロ』の言葉に深く頷いた。 またすぐに、別のレスがつく。 日和:MAYに賛成。 最期に自分と一緒にいる人だもん、どんな人か見てみたい。 『日和』は、『ひより』と読むらしい。 私と同じ、高校二年生だそうだ。 割と珍しい名前だが、本名かどうかは聞いていない。 …そういえば、私のクラスにも『日和』という名前の女の子がいたっけなあ。 ただ、そのクラスメイトは、この『日和』とはまったくの無関係だろう。 クラスメイトの多田崎日和は、活発かつ傍若無人な女の子だ。 自殺を考えるような人間だとは、到底思えない。  
/126ページ

最初のコメントを投稿しよう!

109人が本棚に入れています
本棚に追加