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高橋春紀
『一度、皆さんで顔合わせをしませんか?』
そんなことを言い出したのは『MAY』だ。
私は、《自殺サークル》の掲示板を表示している、ケータイのディスプレイを見つめた。
ログインした状態なので、真っ黒な画面の端には真っ赤な文字で『春紀』という私のハンドルネーム(ちなみに本名)が表示されている。
ケータイ片手に、私はポツリと呟いた。
「顔合わせ、かあ…」
自殺の段取りはもう、サークルの皆で決めてある。
内容は練炭自殺。
決行は一週間後だ。
ただ、その前に一度、皆で会おうというのが、MAYの主張だった。
リロード。
ケータイの画面が、一瞬、真っ白になる。
再び画面が黒く塗り潰された時、MAYの書き込みに、レスがついた。
ヒロ:どうして?
わざわざ仲良くなっても、どうせ、すぐに死ぬんだよ?
まったくもってその通りだ。
私は、サークル最年長である、大学生の『ヒロ』の言葉に深く頷いた。
またすぐに、別のレスがつく。
日和:MAYに賛成。
最期に自分と一緒にいる人だもん、どんな人か見てみたい。
『日和』は、『ひより』と読むらしい。
私と同じ、高校二年生だそうだ。
割と珍しい名前だが、本名かどうかは聞いていない。
…そういえば、私のクラスにも『日和』という名前の女の子がいたっけなあ。
ただ、そのクラスメイトは、この『日和』とはまったくの無関係だろう。
クラスメイトの多田崎日和は、活発かつ傍若無人な女の子だ。
自殺を考えるような人間だとは、到底思えない。
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