『キス魔な彼女』

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「十夜、それ美味しぃ?」 「……個性的です。食べますか? 一口と言わずに全部」 「絶対にやだ。不味そうだもん!」  やはり狙ってこれにして来たな。しかし、バニラ美味しそう。妙な味でいっぱいの口を直したい。  さて、バニラは彼女の大が付く好物。くれるだろうか。 「すいませんが……」 「やだよ。バニラはあげないぃ!」 「……撃沈」  妙な後味の中、夕方の色が降り注ぎもうすぐ夜を主張し始める。  歩いていると分かれ道、彼女との時間はここまでだ。 「じゃあね、また今度~!」  腕が取れるんじゃない? と思うくらい大降りしながら彼女が去って行った。  微笑ましい光景を堪能していると、あの抹茶コーヒーチョコレート、佃煮風味が口の中でまた復活。  台無しだよ本当に。ここまで僕を追い詰めるとは。  恐るべし、抹茶コーヒーチョコレート、佃煮風味。  
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