『キス魔な彼女』

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「んんっ、ん……」  一分が経過しただろうか。恥ずかしい感情が精神をがっちり掴んでいるせいか一分が一時間に思えてしまう。  愛しそうにようやく唇が帰路へ。彼女は満足そうだった。  見事な黒を醸し出している髪。長くてそれをツインテールに。  ふわりと舞うかのように髪が揺れ、まるでキスが嬉しくて踊っているみたいだ。 「十夜、アイスクリーム買ってぇ~。ねぇ、良いでしょ?」 「良いですよ。あ、僕の分に美味しそうなもののチョイスお願いします」 「分かったぁ~! 任せてぇ~!」  両手を突き出しながら走る姿は大きな子供だ。  アイスと睨み、「う~」と唸りながら威嚇し、獲物を突いた。  捕まえた冷たい固体を僕まで持って来て突き出す。 「えっへへ、やっぱりアイスはバニラだよね。はい、十夜はこれだよ」  抹茶コーヒーチョコレート、佃煮風味。  メーカーさん、本当にこれが売れると信じているのか?  後先を考えないから僕のように悲惨な目に遭う人が出るじゃないか。
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