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「秋人、授業始まってるぞ」
肩を揺すられて俺は物思いに耽っていたのをやめる。
直哉の隣であのときのことを思い出していたことが悟られていないかと不安になるが、当の直哉にその様子が全くないのに安堵のため息を漏れる。
それからが大変だった。
一度意識すると中々消えず、親友と思っていた直哉をいつしか恋愛対象としてみてしまっている自分に気がついた。
幸いなことに直哉は俺の気持ちに気がついていない。
「あぁ、悪い。ちょっとぼうっとしてた」
「珍しいな。いつも俺がぼうっとして言われる方なのに」
俺の失態が楽しいのか直哉はニヤニヤしながら俺を見る。
「うるせぇな。俺のことはいいからちゃんと前向いてろ。」
直哉の顔を無理やり前に向かせると、俺はシャーペンを持ち授業に集中するふりする。
俺の様子に直哉も諦めたのか素直に授業を聞き始めた。
そんな直哉を横目で見ながら俺は気付かれないように溜息を吐く。
―――今の状況が潰れるくらいなら俺は絶対にこの気持ちは伝えない。
もし直哉に告白して親友の座までなくなるのが一番怖かった。
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