‡第一章‡

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授業も終わり食堂で昼をとろうと1人で食堂に入ったときだった。 直哉はサークルの先輩に呼ばれたとかで今はいない。 「秋人ッ」 俺の姿を見つけると手をぶんぶんと振って自分の存在を知らせようとしているのが1人。 「何だよ、綾香」 俺は小学校からの腐れ縁である藤堂 綾香の方に行く。 「何だよ、はないじゃない。とりあえずここに座って」 そう言いながら俺の手を引っ張り無理やり自分の隣に座らせる。 仕方なく座りながら久しぶりに間近で見る綾香の顔を観察した。 社長令嬢でもある綾香は整った綺麗な顔をしていて昔から男にモテていた。 しかしこの我がままな性格と顔に似合わないがさつなところが彼女の唯一の欠点であることを秋人は知っている。 などと言いながら高校時代、彼女と付き合っていたこともあるのだから自分でも矛盾しているのだが。 「実はさ、秋人にお願いがあるんだよね」 「……なんだよ」 綾香の顔を見ながら俺は嫌な予感を覚える。 彼女のお願いは大抵良くない話ばかりだ。 付き合っていたときもお願いと言われて何かと思えば、朝から晩までショッピングに連れていかれ、荷物持ちに使われたり。 彼女の趣味ともいえる見るのもおぞましいグロテスクな映画を見るのにつき合わされたりと……いい思い出はあまりない。 「そんな嫌そうな顔しないでよ。私のバイト先の友達がさ、この前彼氏と別れてすっごい落ち込んでるんだよね。だから少しでも元気付けたいから誰か紹介してあげるって話になったんだ」 「……まさか俺を紹介しようなんて考えてないよな」 「そうだけど。べつにいいでしょ?」 俺の予感は当たったようだ。 冗談じゃない。今は直哉という好きな奴がいるのだ。それなのに紹介されても困るとしか言えない。 「秋人いま彼女いないでしょ?」 「まぁいないけど………」 「じゃあ決定ね。その子に秋人のメアド教えとくから」 勝手に話を進めると「頼んだわよ」と言いながら綾香は席を立つ。 こうなった綾香は他人の言うことに聞く耳を持つ奴じゃない。 「めんどくせぇ……」 誰にともなく呟くと腹の虫がお腹が空いたことを知らせる。 それに従うように立ち上がると昼飯を食べるために食券を買いに行った。
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