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その日のうちに綾香の言っていた子からはメールが来た。
名前は綾城 佳那。
年は俺と同じで21歳。
俺の大学の近くにあるO女子大学に通っているらしい。
何回かメールのやりとりをしていると彼女が俺に好意を持っているのはすぐにわかった。
普段ならそれは喜ばしいことの筈なのに今の俺には答えることが出来ないけど。
「彼氏と最近別れたなぁ……」
ベッドに寝転んでメールの返事を打ちながら、別れたばかりでもこうやって他の男とすぐにメールが出来る相手の順応性に感心しながら呟く。
1人暮らしになるとどうやら独り言が多くなるみたいだ。
誰もいない部屋の静けさにどうしても1人で話してしまっている。
メールの返信をすると数分後にはすぐに返事が返ってきた。
さきほど写メを交換しようと言われて向こうから送られてきた画像には美女が映っていた。
長い髪の毛はふわふわに巻かれていてお嬢様学校と呼ばれているO女子大学に通っているのを納得させる上品さ。
佳那の隣には綾香が写っていて二人とも楽しそうだ。
写真とともに送られてきたメールにはこんなことが書かれている。
【秋人くんのも送ってね】
「…………」写真を撮るのはあまり好きじゃないが送られてきたなら仕方ないかと、適当に自身の写真を一枚撮る。
写っているのは笑顔もなんもない、愛想の悪い俺。
だけどそれでいい。
「直哉………」
俺が今好きなのは直哉だ。
直哉以外の誰に好かれても嬉しいなんて感情は湧いてこないだろう。
「重症だな…」
今朝も言った言葉を呟くと俺は携帯を閉じ、そのままゆっくりと目蓋を閉じた。
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