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直哉が来るとわかって早めに家に帰ると俺は散らかっていた自分の部屋を掃除する。
前は直哉が来るぐらいで部屋を掃除することはなかった。
だけどあいつのことを意識するようになってからはつい見栄を張ろうとしてしまって、気がついたら部屋の片づけをしている自分がいる。
「こんなもんだな」
綺麗にし過ぎると逆に不審がられそうだからある程度で掃除を終わらせる。
丁度そのとき部屋のチャイムが鳴った。
「はいはーい」
部屋の鍵を開けて扉を開けると時間にちょっと遅れてやってきた直哉がいた。
「イキナリでごめんな」
「いつものことだろ」
やはり今日の直哉はおかしい。
いつもならこんなこと気にしない奴だ。
―― 一体何があったんだ?
嫌なざわめきが俺の胸を駆け巡った。
とりあえず部屋に上げると直哉はいつもと同じように俺のベッドの上に胡坐をかいて腰を下ろす。
それを見届けながら俺は珈琲を二人分淹れた。
出来立ての珈琲を直哉に差し出すと嬉しそうにあいつが笑いかける。
「サンキュ」
「あぁ」
「………………」
それからお互い妙な沈黙が流れる。
今まで直哉と一緒に居て初めての経験だ。
――もしかしたら……。
あれこれと考えているとありえない希望が俺の中に生まれる。
「あのな、秋人」
珈琲を飲み終わった直哉が言いにくそうにちらりと俺を見る。
――もしかして……告白?
直哉の言動や行動を見ていればありえない気もしなくなって来た。
「実は……」
直哉がゆっくりと口を開いた。
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