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期待と不安に忙しく鳴り響く俺の心臓の音が煩いなか、直哉の言葉を待つ。
「実は俺……………好きな子が出来たんだ」
「……好きな子?」
その単語で俺の望みは一気に砕け散ったけど。
ありえない希望に喜んでいた自分が恥ずかしくて、早く続きを言うように促す。
「それで?」
「あ、あぁ。同じバイト先の子なんだけど、すごく可愛くってさ。優しいし……俺、こんなに人を好きになったの初めてで…」
…………………最悪だ。
好きな奴から好きな奴の相談をされることほど悲しいことはない。
だけど普通に考えればこれは当たり前のこと。
女友達が女友達に恋愛話を相談するように、男友達が男友達に恋愛相談するのになんら不自然なところはない。
「……頑張れよ」
「へ?」
そう、だから直哉が相談するのは、まして親友の俺に相談するのは至極当たり前のことだ。
――それなら俺は如何するべきか決まってる。
「応援してるからさ」
「秋人……」
直哉が嬉しそうに笑う。
笑うと目じりが下がって美人顔で一見近寄りがたい直哉の顔が人懐っこい犬みたいに見えて親しみが湧きやすく、とても魅力的だ。
――それを一番近くで見てたかったな。
直哉に応援の言葉をかけて笑いかけながら、俺の心は確かに涙を流していた。
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