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見渡す限り絢爛豪華な調度品が揃い、他の部屋よりも格段に広い部屋。
そう、これは幼い頃からの俺の野望が現実となった証明。
ここは軍事に秀でた『第2都市フェブラル』ミズガルズ大陸の険しい山岳地帯に作られた都市だ。
そして俺は都市組織『夕暮れの侵略者』の総司令官ハルク=セルシウスである。
武芸、知謀に秀でた俺ではあるが、悩み事が一つあった。
それは、最近活動が活発化している魔精とかいう悪魔もどきの対処などではない。
「ふあぁ~あ」
ふてぶてしく俺の城(部屋)の最高級ふかふかソファに寝転んで、あくびをしている女のことだ。
「アリス!! 貴様、俺の城で何してやがる!!」
第2都市最高権力者の俺が怒鳴ってもそいつはまるで気にする風もなく視線をこちらに投げて、
「ここは元々わらわの為に建造された城塞都市でしょう? 魔聖十二天の一角、アリス=カタストロフ様のね」
さらりとそう言いやがった。
アリス=カタストロフ、第2都市を裏から支配する、『破壊』を司る悪魔(外見、内面共に)である。
その容姿は腰まで届く程の長い黒髪、血のように赤い唇、透き通るように白い肌。
シックな黒のドレスを着ていて、その背から悪魔と言うよりは堕天使と形容するに相応しい漆黒の翼が生えている。
“外見”年齢は十八歳くらい。女性的な体つきで、写真でみるならば間違いなく美人だろう。
しかし、こいつの本性はそんなものではない。
「何って暇つぶしよ。最近やることなくて暇なのよねー」
「よし、なら北の砦を攻めているベリアルとかいう悪魔を討伐する任務をやろう」
部屋から追い払い、ついでに仕事を片付ける我ながら良いアイデアだったのだが、
「めんどくさーい」
一言で切り捨てられた。
「それにあんなやつ悪魔なんかじゃないわ。闇属性の内包する負の力に負けてるただの魔精よ」
アリスは起き上がって伸びをしながら退屈そうに言った。
さらに部下達が苦戦している奴をあんなやつ扱いである。
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