14人が本棚に入れています
本棚に追加
「少しは都市、そして俺の為に働け!!」
俺の野望を邪魔されるわけにはいかない。
「あら、領地を侵略してわらわの支配する世界をつくるのがあなた達『夕暮れの侵略者』ではないの?」
アリスは傍目には可愛らしく首をひねった。
「違う!! 古きを破壊し、再生の土台をつくるのが俺達だッ!!」
俺は頭を抱える。これでは暇つぶしに使われてるだけではないか。
「まったく、ミール村襲撃の疑いもまだ晴れてないというのに」
内外共に問題は山積みだ。
人間の居住区、都市の数は13だ。しかし、都市同士の中継点、研究施設などの集落も幾つか存在する。
7年前に第7都市近郊の村が襲撃される事件があった。
狙われたのは各都市が厳重に管理する“遺産”の一つ。
生き残りの少年の話によればアリスに似た者を目撃したらしい。
その村の惨状はまさに破壊の名に相応しいものだった。防御結界をも貫いて全域を崩壊していた。
「だから、わらわはやってないわよ。そりゃあ“彼”のものなら全部欲しいけどね」
キャーと黄色い声を出して悶えるアリス。
そんな時、傍らの電話が鳴った。アンティークの豪奢な電話である。
俺が受話器を掴むと焦った声が聞こえた。
北の峡谷を守るクレトス砦の守備隊長の声だ。
「ハルク様、緊急です。ベリアルの参戦により砦の守備兵の半分が壊滅、救援をお願いします!!」
「わかった、俺が行く」
二つ返事で答えると守備隊長は狼狽する。
『司令官自らがですか!?』
「ああ、指示を出すやつが一番働かなくてどうするよ」
高い地位に満足して怠ける奴などいくらでもいる。しかし、それでは部下の信頼は得られない。
誰よりも努力し、この地位に就いたからこそ俺は知っている。
「臆病風に吹かれた奴らの士気を高め、頭を仕留められるのは俺だけだ。文句はないな」
『はい!!』と守備隊長は返事をし電話を切る。
最初のコメントを投稿しよう!