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舳先へ着き海の様子を見ていると、後ろから声をかけられた。
「お嬢、今度はずいぶん賑やかなの拾ってきたようですね」
振り返ると、短く刈り込まれた髪日に焼けた肌がっしりとし逞しい体を持つ30代半ばの男がいた。
「『レイ』アタシは、もうお嬢って年じゃないんだけど」
腕を組みながら 軽くイサーナが睨み付けると
レイは穏やかに微笑みながら
「俺にとっては、いつまでもお嬢ですけどね」
イサーナの船の副船長をつとめる レイは この船の先々代の船長の時から 船に乗っていて、赤ん坊の時から知られているので 頭の上がらない存在である。
「アイツが消えて…9年この船の仲間もずいぶん変わりましたね」
イサーナは体を海の方に向け レイの顔を見ないように答える
「9年…そんなにたったんだね、オルカ兄様が消えてから」
サラサラと海風に揺れるイサーナの短い銀髪を見ながら
「お嬢、もう髪は伸ばさないんですか?綺麗な髪もったいないと思いますけど」
「あの日に決めたからね、もう護られるだけの自分との決別を だから、髪は伸ばさない」
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