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夕暮れも近い時刻に校舎を1人の人物が歩いていた。
薄茶の髪にブレザーを着崩した格好の長身の青年だ。
「忘れ物なんてなぁ……けど、課題だから取りに行かないわけにはいかないし。面倒だな」
面倒臭そうに、ブツブツと独り言を呟きながら廊下を歩く…。
クラブも終わり、誰も居ないからなのか、いつもより自分の足音がやけに響くのが不気味さを引き立てていた。
「誰も居ない学校なんて、気味悪いな。サッサと用事を済ませて帰ろ」
目的地である教室に着くと鍵を開け、ドアに手をかけた時だった。
「すみません」
「うわっ!!」
突然、背後から声を掛けられた為、思わず悲鳴をあげる。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか」
「……」
少し傷付いたとでも言いたげな声がする……青年は恐る恐る振り返ると、黒いコートをはおった黒髪に医療用の眼帯をした細身の青年が佇んでいた。
「…ゴメン。つか、お前ダレ?見ない顔だけどさ」
「明日、この学校に転校してくるんですよ。今日は下見に来てまして…」
話し方は淡々としているが、明瞭な声で青年は語る。
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