第一話

7/7
前へ
/288ページ
次へ
  とりあえず、リオンは“闇”なのであった。 それ以下でもなく、それ以上でもなく、ただ、闇。 普段はこうして人の形を保っているが、先程炎が頭を通過したように、彼からは血がでない、肉が切れない。 まさに存在こそが、魔法であった。 「で、何の用? 俺だってあんたみたいに自分の世界に入りたいんだけど」 「つれないなぁ。ほらほら、飲もうよ」 「未成年なんで」 「つーれなーいなぁ。エーシェさーみーしーいー」 リオンはじぃーっと目の前の女性、エーシェを見つめた。 どうやら本格的に出来上がっちゃってるようだ。 仕事の時とのギャップがすごいのだが、別に欲情したりはしなかった。 酔っ払いの相手もそろそろ面倒になってきたので、リオンが背を向けると、足元に封筒が落ちてきた。 ひらひらと。 振り向くと、エーシェが目を虚ろにしながら、 「それ、魔法学園、あなた、年齢、楽しむ、べしぃぃ~」 んがー、と。 最後に目を閉じ、同時に豪快ないびきを立てて、我が親愛なるギルド長は旅だってしまった。 リオンはその気持ちよさそうな顔を恨めしげに睨み、封筒を掴んで、部屋を抜け出した。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9215人が本棚に入れています
本棚に追加