9215人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず、リオンは“闇”なのであった。
それ以下でもなく、それ以上でもなく、ただ、闇。
普段はこうして人の形を保っているが、先程炎が頭を通過したように、彼からは血がでない、肉が切れない。
まさに存在こそが、魔法であった。
「で、何の用? 俺だってあんたみたいに自分の世界に入りたいんだけど」
「つれないなぁ。ほらほら、飲もうよ」
「未成年なんで」
「つーれなーいなぁ。エーシェさーみーしーいー」
リオンはじぃーっと目の前の女性、エーシェを見つめた。
どうやら本格的に出来上がっちゃってるようだ。
仕事の時とのギャップがすごいのだが、別に欲情したりはしなかった。
酔っ払いの相手もそろそろ面倒になってきたので、リオンが背を向けると、足元に封筒が落ちてきた。
ひらひらと。
振り向くと、エーシェが目を虚ろにしながら、
「それ、魔法学園、あなた、年齢、楽しむ、べしぃぃ~」
んがー、と。
最後に目を閉じ、同時に豪快ないびきを立てて、我が親愛なるギルド長は旅だってしまった。
リオンはその気持ちよさそうな顔を恨めしげに睨み、封筒を掴んで、部屋を抜け出した。
最初のコメントを投稿しよう!