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少年は荒野を歩いていた。
周りには岩しかないところを、一人で歩いている。
と。
「……見つかってしまいましたか」
辺りは一面荒野だというのに、少年の眼は初めて男を捉えた。
眼前五メートルほどの距離にならなければ気付けなかったのは、多分この男が魔術の類を使ったからだろう。
それくらいやらなければ、この男がここまで逃げられた理由がない。
「マッカードさん。なんであなたが?」
冷たい風が頬を撫でる中、少年は口を開いた。
マッカードはフフンと鼻を鳴らし、
「わかっているでしょう? ゼロの魔術師。あなただって」
相変わらず全てをわかったような話し方をするやつである。
勿論マッカードとともに一時を過ごしたことのある少年からすれば、こんなものはいつものことだ。
話すペースが乱されるなんてことはない。
「残念だけど、わからない」
少年がその旨を伝えると、マッカードは露骨にがっかりとした表情を浮かべた。
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