第十三話

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      ◇ 体自体が魔法な彼らは重力というものは少量しか働かない。 意図的に増やすことはできるが、元々は空気とさして変わらない。 ゆえに、飛べる。 背後に自身の魔法を撒き散らしながら。 闇と炎、漆黒と紅蓮が森から飛び出したのを見て、アリシアはため息をつく。 兄は行ってしまった。 恐らくは、ロンドビルを潰した魔術を相手にするために。 もしかしたら、死んでしまうかもしれない。 そう考えたら、後悔の念が生まれてきた。 ずっと苦しんできた兄。 結局彼とは仲たがいしたままだ。 「生きて、帰ってきて、兄様」 小さく、つぶやいた。     ◇ 「さて、私たちは私たちですることをしなければ!」 アスカはそう言い、勢いよく立ち上がった。 ちらり、と横目でアルノーの反応を伺う。 抜け殻、だった。 先ほどのやりとりが余程効いたらしい。 元々無表情だったのが、輪をかけたみたいだ。 「アルノー。おまえの上司も言ってただろう。これからが大変なんだぞ?」 諭すように、話す。 「知らない」 アルノーは、つぶやく。 「知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない」 アスカは戦慄した。
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