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(助けなんか期待できない、か)
一息いれ、アクトゥスは左手に炎を点した。そして、氷の少女――レノに放つ。
「う、わ!」
予想もしてなかったのか、予想外に驚いたそぶりを見せて、レノが両手で顔を庇う。炎はレノに届く前に、地面から突き出した氷尖によって霧散した。
「そこ!」
そして、彼女は炎が放たれた場所に向けて、冷気を放つ。それに触れたものは空気でさえも、凍結する。しかし、手応えはなかった。
「あり?」
首を捻るが、間髪入れず、背後から射撃。自分の体を炎が貫通した。
「むっ!」
短い憤慨の言葉をつぶやき、背後に向けて再度冷気を放つ。しかし、またしても空を切った。
レノは苛立ちから眉を寄せる。
(むかつく)
レノからすれば、魔力も残り少ないアクトゥスは、蝿のようなものだ。大して害はない。が、邪魔。駆除が必要。
「ぜーんぶこおらせるやるッ!」
口にして、刹那のときも待たずして、レノは行動に移した。静謐とした効果音とともに、あたりに冷気が舞う。
「――ッ」
ガシャン、と何かが割れる音が聞こえたのでレノはそちらを振り向き、――笑った。
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