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「あついよ、おねえさん」
「それだけで済むならたいしたものよ。生身なら丸焦げ必死だからね」
「でも、あつい……」
アクトゥスは手を振った。
「熱くて結構。あたしの最後のあがきが無駄にはならなかったわけだし」
「へへ、そうだね」
二人の会話は殺し合っている者たちのものではない。お互いに、ネジが抜けていた。いや、始めからなかったのかもしれない。二人して、高らかに笑った。
そして、突然、
「じゃあ、しぬ?」
レノの問い掛け。アクトゥスは首を横に振った。
「いいえ、と答えたら見逃してくれるのかしら?」
「だめだよ。ギノスにおこられちゃうもん」
「そう」
一応アクトゥスも会話をしながら打開策を思索していたのだが、どうやら無理らしい。歩いて一歩の位置に、最強の女の子。これは打破できるものではない。
(はぁ……。やっちゃったわね。エーシェ様に顔向けできないわ)
諦念が鎌首もたげてくる。アクトゥスは、のっかった。
(正義のヒーローでも現れないかしらね)
夢物語に半ば期待し、目を閉じた。
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