第十六話

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  「あついよ、おねえさん」 「それだけで済むならたいしたものよ。生身なら丸焦げ必死だからね」 「でも、あつい……」 アクトゥスは手を振った。 「熱くて結構。あたしの最後のあがきが無駄にはならなかったわけだし」 「へへ、そうだね」 二人の会話は殺し合っている者たちのものではない。お互いに、ネジが抜けていた。いや、始めからなかったのかもしれない。二人して、高らかに笑った。 そして、突然、 「じゃあ、しぬ?」 レノの問い掛け。アクトゥスは首を横に振った。 「いいえ、と答えたら見逃してくれるのかしら?」 「だめだよ。ギノスにおこられちゃうもん」 「そう」 一応アクトゥスも会話をしながら打開策を思索していたのだが、どうやら無理らしい。歩いて一歩の位置に、最強の女の子。これは打破できるものではない。 (はぁ……。やっちゃったわね。エーシェ様に顔向けできないわ) 諦念が鎌首もたげてくる。アクトゥスは、のっかった。 (正義のヒーローでも現れないかしらね) 夢物語に半ば期待し、目を閉じた。
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