第十六話

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  果たして。アクトゥスの命は延命されたようである。 「【ダークハンド】」 呪文が耳に届き、目を開けると、眼前の景色が変わっていた。目の前には地面から生え出た黒い手に掴まれた、水色の髪の少女。彼女も口をポカンと開けていた。 「ッ!」 そして、レノは現状を理解したかのように、憎々しげに口を歪めた。 自分は、攻撃されている。 誰に? 第三者。誰? 「きゃっ!」 考えに耽っていると、黒い手にかかる握力が強くなっていった。このまま押し潰すつもりらしい。属性は、闇。しかし、レノにとって、この魔法は一蹴できるものだった。 冷気を全身から放ち、ダークハンドを無力化させる。再び地に足をつけると、発言先を見つめた。――なにも見えない。 「どういうこと……」 小首を傾げながら振り返ると、表情が固まった。先ほどまで追い詰めていたはずの女の姿が見当たらない。 「……にがさないんだから」
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