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「あんたか……。やるわね」
アクトゥスは背負われながら、相手を称賛した。相手は、無表情で、応対。
「……問題ないです」
「まあ、ありがとうね。アルノー。あんたがいなかったら、あたしは今頃死んでたわ」
嘘偽りない言葉。死を覚悟していたため、今回は儲けものだった。
アルノーは満身創痍のアクトゥスを背負いながら、樹海を駆ける。まだ追っ手は迫っていなかった。
「アキ様」アルノーは口を開いた。
「んー?」
「僕は……どうすればいいんでしょう?」
「はい?」
アクトゥスはアルノーの要領を得ないつぶやきに眉根を寄せた。そして、笑う。
「そうね。このまま逃げて頂戴。流石に無駄死には嫌よ。生きられるなら、生きたいし」
「……そうじゃない」
「え?」
アルノーの足が走るスピードを緩めた。
「なによ?」
「僕は、みんなを傷つけた。どうしたら……」
アクトゥスはやっと納得した。彼は魔法技術交流戦のことをいっているのだ。
「あれはあたしの命令よ。あんたが気に病む必要はないわ。結局、闇のゼロは見つかったわけだし」
本当はエーシェが教えてくれればあんな手荒なことをしなくてもよかったのだが。
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