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今度の場所は打って変わっての、小さな部屋。
そこにあるこれまた小さな簡易ベットに少年、リオンは横たわっていた。
「……」
リオンは自分の右手を眼前にかざしてみた。
なんのこともない、人の手である。
しかし、少し魔力というか、力を加えてみると、その姿は揺らぎだした。
全てを飲み込む、漆黒の闇に。
「入りますよ」
その声でリオンは闇を引っ込めた。
どうやら間に合ったらしく、扉を開けて入ってきた人物は笑みを崩してはいなかった。
「なんだい?」
リオンは無礼を避けるため、ベットから立ち上がり、入ってきた中年の男に近づいていった。
この男、今リオンが泊まっている宿屋の主人である。
わざわざそんな人物が客の元にやってくるなんてのは、十中八九、伝言だ。
「はい。エーシェという方からなんですが、至急戻れ、だそうです」
ビンゴ。
「はぁ」
リオンはため息をついた。
なんて人使いの荒い人なんだろうか。
慣れろといったって慣れられるものでもない。
仕方がないので、宿屋の主人にそのまま泊まってもいないのに代金を払い、リオンは宿屋を後にした。
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