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「アッハハハッ!」
闇夜に。一人の女性の高らかな哄笑が響き渡る。彼女は自身の口角を不気味に吊り上げる。
「いいわよ? あんたたちがその気なら、あたしだってもう手加減したりはしない」
彼女の瞳は狂気に染まる。星空にも劣らないほど散々と輝くその双眸は、虚空を見据える。
「あたしの部下を殺したこと。――たーっぷり後悔させてアゲル」
彼女が背負うものは、単なる憎悪。負の感情を背負い、彼女は一歩足を踏み出す。その先にあるのは、何の色もない、漆黒。
◆
「私は……何もできなかった」
少女はつぶやく。空が見える建物の中で、誰にともなく。近くにいた他の生徒が振り向くが、その少女は意に介さない。
「何が……魔法学園最強の魔術師。何が――十年に一度の逸材」
彼女は嗤う。自分に向けて。何もない空虚な天井を眺めて。自信の自身の経歴を覆すように。
「いいわ。面白い」
ひとしきり笑った後、彼女は笑う。朗らかな笑みだった。
「だったら人間が最強だってことを、身に刻んで差し上げる。待ってなさい、人外の者達」
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