スクラップブック

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 【モデル時代の写真】  「君、その写真……。どこで見つけてきたんだい?」  「本棚の奥にあったよ。ついでだから話を聞かせて?」  「……話と言われても。何が聞きたいの?」  「これって本物?」  「………………?? ……ええと、どういう意味だろう。 もうちょっと、わかりやすく言ってもらえるかな」  彼女の質問の意図が分からずに尋ねる。  「本物のモデルさんが出てる、ホントのファッションショーなの?」  「ああ、なるほど。もちろん、そうだよ。芝居かなにかかと思った? これは、ニューヨークで行われたコレクションだね。懐かしい」  「モデルやってたんだね。どうやってなったの?」  「ふふっ、モデルに興味があるのかい? 僕の場合は、致って普通の手順を踏んだよ」  「事務所に登録してオーディションを受けての繰り返し。  まあ、思ったより早く、いろいろ使ってもらえたけど」  「オーディションなんてあるんだ。  そういうの全部、合格したの?」  彼女がとんでもないことを言い出す。  「まさか。落ちたことも当然あるよ」  「やっぱり、ショックだった?」  「いや、別に。落ちたら、また次へ行くだけの話だからね」  「その頃、彼女っていた?」  「ずいぶんストレートに聞くね。  残念ながら、彼女というほどの人はいなかったよ」  「ホントに?」  「僕はみんなと仲良くしていたから。ふふっ」  「満足してもらえたかな? よければ、それを返してもらいたいんだけど」  「あ、うん。ありがと」  (雑誌に載っているモデルみたいで、本当に驚いたっけ)
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