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僕の歴史―始まり―

　それから嘉月は、僕より１つ下の弟にあたるんだ。

　そしてもう一人、今年１９歳になる花乃＜ﾊﾅﾉ＞という妹がいる。

　だが、花乃だけは母親の元で暮らしている。
　小学生の頃、２年間イギリスへ留学した経験を活かして英文科を学んでいると聞いた。

　母親？　ああ、あの人はこの世界が合わなくて、幼い頃から別居しているんだ。

　僕が歌舞伎をやっていたころに演じた舞台について、簡単だけれど役柄や物語について説明しておこう。

　『源氏物語』春宮/５歳

　平安時代に紫式部によって書かれた、有名な長編小説だね。

　歌舞伎だけでなく、映画や舞台でも上演されているし、古典として学校で習うこともあるだろうから、ストーリーは知っているかな。

　かいつまんで話すと、主人公の光源氏は、時の帝・桐壺帝と、その寵愛を一身に受けた桐壺のあいだに生まれた皇子だ。

　その後、桐壺は死んでしまうが、その母に生き写しだという父の妃である藤壺に思いを寄せた源氏は、過ちを犯してしまう。

　そして生まれた春宮を、幼い僕が演じたというわけだ。
　これが僕の初舞台になる。