僕の歴史―始まり―

7/10
前へ
/89ページ
次へ
 『鏡獅子』胡蝶の精/12歳  正式には『春興鏡獅子』<シュンコウカガミジシ>と呼ばれる、江戸時代を舞台にした物語だね。  技芸を披露する弥生という娘が、舞に没頭し手に取った手獅子に連れ去られてしまうという物語だ。  弥生が連れ去られたあと、僕が演じた胡蝶の精が現れて牡丹の花と戯れるように、優雅に舞い踊るんだ。  僕は12歳のときに、この役を演じたけれど、これで劇場の特別賞をいただいたことを覚えているな。  このあとは襲名に向けて稽古を続けていったわけだけれど、少し思うところがあってね。歌舞伎の世界からは離れてしまったんだ。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加