保健室の眠り姫

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 授業が全て終わるとクラスメートは部活を決めるために校内を巡る。 「いらっしゃいませ~」 ただ、帰宅部希望の俺はテキトーにコンビニに寄って雑誌を立ち読みをする。間延びした研修生の挨拶を聞き流して店内を歩き週刊のマンガ雑誌を手に取った。表紙を見て気になったセンターカラーの新作を読んでみたが、あまり面白く無かった。 「いらっしゃいませ~」 5分くらい経つとまた間延びした挨拶が聞こえた。ちょうど一区切り着いたところなので横目で少し見ると、どうやら俺と同じ高校の女子だった。 「……先輩かな?」 ブレザーにチェックのスカートのありがちな制服で男女兼用の赤いネクタイに着いた赤いアクセントのあるピン、その色がその女子を二年生だと俺に認識させる。ちなみに現在は緑が一年生で青が三年生になる。 「どうでもいいか……」 顔立ちも割と可愛いとは思うけど、関わり合う事も無いだろう女子より今は最新号の方に興味がある。女子も程々にして雑誌に意識を向けようとした。後ろを女子が通り過ぎ、その人も雑誌を手に取った。 「…………なッ!?」 俺は思わず声を漏らした。先輩らしき女子の手にあるのは成人向け雑誌……つまりエロ本だ。しかも無抵抗に読まれるとさすがに驚く。それどころかドン引きしてしまう。 「…………ふぅん」 元々興味無いのか期待ハズレだったのかは知らないが、その先輩は呼んだ雑誌(制服天国というらしい)を元に戻した。最初は恥ずかしくなったのかと思ったが、先輩が別の雑誌(ろりぱら☆)を手に取った事で見事に予想を打ち砕かれた。 「…………」 俺はマンガを忘れてその先輩をずっと見ていた。先輩の居るかどうかわからない彼氏の性癖を満たす為に努力している様にも見えるが、そうだとしてもかなり痛い。 「…………」 沈黙の中、先輩が俺を何度か横目で見てきた。先輩は雑誌を持ったままこっちに向かってくると、一言だけ俺に教えてくれた。 「ねぇ……悪いモノが憑いてるよ?」 お前だろ、絶対に。
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