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先輩の言った『またね』の意味を知ったのはその翌日だった。昼休みにクラスメートと食堂に行こうと教室を出た瞬間、先輩と目が合ったからだ。無視しようとして連れの神田や福美と話していたが、先輩は進路を塞ぐ様に俺の正面へとやって来た。
「ほら、また会った」
どうやら授業の合間に探していた様で、授業が終わってすぐ俺の居る教室に来たらしい……軽くストーカーだろ。
「そこまでする理由、あるんですか?」
「人数少ないから必死なのよ」
呆れた俺と、してやったりの笑顔の先輩。奇妙な構図が出来上がって、周りの連中は誰も近寄らない。一緒にいた神田や福美も遠巻きにこちらを見ていた。助けろよ、頼むから。
「今日は用事無いよね?」
先輩が当たり前の様に聞いてくる。予め知っている様な言い回しだが、予定を教えた事は無いはずだ。
「昨日の用事って……嘘、なんでしょ?」
ばれてた。俺が見せてしまった一瞬の動揺を、先輩は微笑んで見ていた。若干黒いオーラが出ている様に見えるが、多分見間違いだ。
「先輩に嘘ついた罰として、今日から見学に来てもらいます」
何の罰だ、と思ったが逆らったところでロクな事が起こらない事は目に見えてる。脳天気な口調の先輩は俺の手首を掴みながら、引っ張る様に歩き始めた。俺の頭の中にはドナドナが流れ、野次馬達は売られていく家畜の様な男――つまり俺を見て囃し立てたり同情したりしていた。
「お一人様、ご案内~」
「…………」
今日の獅子座の運勢は、最下位に違いない。
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