保健室の眠り姫

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「冗談ではありません。これは七不思議と呼ばれてはいますが、私達ミステリー同好会が追う理由があるのです」 明日真先輩から気迫が感じられる。ミステリー同好会がオカルトを追っている理由なんてたいしたことないと思えるが、気になった事もまた事実だった。 「実際に事件……起きているとすれば、どうかな?」 続きを告げたのは魚住先輩だった。俺は魚住先輩の言葉を疑って、理解した後は信じる事をしなかった。だってバカバカしいにも程があるだろ? 「起こるわけ……無いじゃないですか。そんな妄想、この前の霊感商法で充分です」 俺が言葉を結んだ瞬間、魚住先輩が喋り始めた。 「今から30年前の5月12日、当時彩園高校1年の田村光さんが保健室のベッドの上で遺体になっているのを発見された。遺書のような物は無し、死因は……今のところ服毒、大量投薬による自殺だと思われる。学校の者に事情を聞くと、昔から言われている『眠り姫』が現れたと語っていた…………これが彩園高校七不思議の1つ『保健室の眠り姫』だよ」 「何が眠り姫ですか。実際の死因は服毒自殺なんでしょう?」 俺は魚住先輩の変わり様に内心驚きながら、気にせず反論した。 「原因は最後までわからず、なんですよ。保健室という特性上、風邪薬か何かを大量摂取したと思われています。ただ、これにも穴があるんです」 「何ですか……?」 俺は明日真先輩がにこやかに語る事に一種の恐怖を覚えた。 「保健室の備品に、そんな物は無かった。他から持ち出した形跡も無く、遺体付近や保健室内にも空き瓶の類も見つからなかったそうですよ。ドアと窓には鍵、掛かってたようですし」 明日真先輩は何が面白いのかにこやかに笑っているが、到底笑える内容ではない。 「ね、リアルになって来たでしょ?」 表情に出ていたのか、魚住先輩は俺の思考を読んだように笑って聞いてきた。 「…………」 ムカついたから無視してやったけどな。
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